梅仕事自慢をした前回にも少し書いた、2023年に発売された『Staffer Case』というゲームの話をするよ。
韓国の会社が作ったゲーム。ジャンルは「(テキスト)アドベンチャーゲーム」とかとか「ビジュアルノベル」呼ばれるもので、このジャンルの何か有名なタイトルを挙げると、って考えてみたら、2026年現在ではどんなタイトルを挙げるのがいいのか、結構悩ましいことに気づいたぞ、マジか。「美少女ゲームのさ、ほら、紙芝居的なさ」とか言っても、「美少女ゲーム」ってなにってことに、なりかねないなって、思っちゃうよね。
このジャンル自体が下火になってきているということはなく、ずっと作られ続けているものではある。それこそインディーゲームが盛り上がりまくりという理由で集英社がゲームを作った1本目が、「テキストアドベンチャー」だったので、あれ?有名なタイトルじゃん!『都市伝説解体センター』が、それのそれです!!
基本的には文字を読んでいくので、読み物としての側面が強いゲーム。近年でも話題となったタイトルは他にもちゃんとあって、国内だと『パラノマサイト』シリーズや『魔法少女ノ魔女裁判』が、流行っていたよ。まあ、みんなさ、そんくらい知ってるっすよね。
『Staffer Case』はその中でも推理に焦点を当てたものとなっていて、ミステリー仕立てのストーリーの謎解き部分を、プレイヤーが体験できるっていうやつ。たぶん、多くの人間は探偵になりたいはずなので(?)、そういうゲームって嬉しいよね。
ゲーム画面をいくつか紹介する。基本的にはこんな感じ。

背景とキャラクターの立ち絵、それに画面の下に「テキストウィンドウ」とか言われる文章が表示されるエリアがある。一般的なアドベンチャーゲームは全部これ。左にいるのが主人公の「ノート」。右にいるのが主人公の上司。クールでミステリアスな、いつも革手袋をしている、人に触れたがらない、サイコメトラーで、シュールなジョークをよく言う、妖しい女上司。なにそれ、いいね!!!
推理パートになるとこうなったりする↓

捜査資料がいくつもあって、そこに書かれている項目を正しく選択(画像にある青いピンがそれ)する必要がある。「○○には犯行は不可能とされているが、この資料ではそれを否定できる!」みたいな問いが出されて、それにそった回答を選んでいくと物語が先に進む。この謎解きの難易度はそこまで高くないと感じたが、ちょっと特殊な設定のミステリーでもあるので、馴染みのない人にはわけワカメかもしれない。
まあ、ともかく、こういうのを繰り返して事件を解決して、っていうエピソードが5つ収録されており、1つのエピソードがだいたい2時間くらいだったかな。かったるい気分にあまりならなくて、それもよかったよ。
ま、システム的には特に革新的なものがあるわけでもなく、尖ったことをしているわけでもない。部分的に、『トリックロジック』[1]というPSP専用だった変なゲームに似ている気もするが、気のせいだと思う。
なのでプレイに新鮮さなどはないのだけれど、シナリオが存外よかった。かなりよかったかも。
っていうのも、事件の真相をつまびらかにしたせいで、悲しいことがいろいろ起こってしまうので、主人公が悲しい気持ちになって悩み始めるんだけど、これさ、米澤穂信的なやつじゃん。『氷菓』的なやつじゃん〜。まじで?なんで〜?っていう驚きがあった。
いやいや、そういうのってミステリーにありがちなやつでは?と思われる人もいるかもしれない。本当のことを知らなければ幸せだった・・・みたいな話ってまあ、あるし、わかる。でも、ミステリーにおいてこの手の問題は、とりわけ日本ではなかなかに厄介なのわよ。
いわゆる「後期クイーン的問題」とか言われるやつ。ミステリーマニアしか知らんだろって感じの言葉なのだけれど、私のざっくりした理解で説明してみる↓。
日本国内のミステリーはなぜかある時期からミステリーのパズル的な部分に様々な試みが盛んになされて、その結果、どういうわけか「原理的に真相なんて記述できなくね?」という探偵泣かせな問題にぶち当たる(詳しくは検索とかしろし)。ウケる。法月綸太郎という作家が柄谷行人という哲学者から影響を受けて提唱したこの問題は、ミステリー界に大きな影響を与えたという歴史があるんだってよ。「ノックスの十戒」とか言ってる奴らだからさ、まあ、パズルこねこねしすぎておかしくなっちゃったんだね・・・、っていう気もしてくるけど、今度はその問題を乗り越えようと色んな作家たちが頑張るわけで、その1人が米澤穂信だって話。真相をつまびらかにすることの意味をずらして、青春小説とかを書いたりしてんだねえ。へえ。
という、ものすごくドメスティックなミステリーの文脈が?韓国のゲームで?っていう驚きがあるっていう、話なんですね。マジ?
ここでさらにミステリーアドベンチャーゲームの歴史を振り返ったりするのはだりーので、別にしないけれど[2]、とりあえずカプコンの『逆転裁判』(2001年)とそっから続くシリーズ、そしてその流れを汲んだスパイク・チュンソフトの『ダンガンロンパ』(2010年)シリーズって、すげーんだなと思わされたりもした。というのも、『Staffer Case』はまさにこの2つのゲームから強く影響を受けているように思えるゲームで、そういったゲームが日本の外で今になって作られたりするんだなとか、ぼんやり思う。しかもこの作品だけじゃなく、中国でも『無罪裁廷』という似たようなゲームが作られていることを鑑みると、もうちょっと深い意味を感じてしまう。『Staffer Case』も『無罪裁廷』も、何なら『魔法少女ノ魔女裁判』も、「異能力ミステリー」などと呼ばれるもので、ミステリーの中ではニッチなサブジャンルとされているものが、ゲームというメディアで親しまれていることに驚く。
「異能力ミステリー」ってなんだよとか、思う人もいるはずなので、なんか説明しておくと、『ジョジョの奇妙な冒険』の主に第3部から出てくるような、正体不明のスタンド攻撃のその能力を主人公たちが推測して対策する、あの推測の部分が、異能力ミステリーだと思ってもらえればいい。まあ、ジョジョ読んだことねーよって人もいるだろうし、世界って広いし、もうちょっと説明すると、ミステリーというのは言ってしまえばパズルなので、ある条件下(凶器がクソ重くて、クソ重い物を持てるやつが1人しかいないとか)ではこのような論理的な結論が導き出せるってことを、面白おかしく表現するのだけど、その条件の中に魔法とか超能力が存在する前提を含まれたら、もっとややこしくなってウケる、みたいなものが、「異能力ミステリー」とか「特殊設定ミステリー」とか、なんか言われたり、してる気がする。ミステリー小説では、わざわざややこしくされて喜ぶのはミステリーマニアくらいなので、ニッチなサブジャンルと表現させてもらったわけなのだが、ゲームでミステリーとなると、もはや超能力とか出てきて当然感がある。(ってか米澤穂信もファンタジー設定のミステリー『折れた竜骨』とかも書いてたりしてるけど、よ、読んでねーよ困)
ミステリーでアドベンチャーなゲームって、テキストアドベンチャー形式じゃなくても実はいろいろあって、同じく韓国の開発者が作った『Legal Dungeon』みたいな検察官になって立件させるための架空のOSを操作するゲームもあれば、『Return of the Obra Dinn』やそれに影響を受けた『The Case of the Golden Idol』のような、状況をつぶさに観察するところからプレイヤーに推理を要求してくる歯ごたえあるゲームもあり、それらの流れを『Staffer Case』はしっかり抑えられているように見える。
『Staffer Case』は、謎にハイコンテクストなミステリーゲームとして、目を見張るものがあるんだぞと。マジで『都市伝説解体センター』って、その辺何もしてなかったけど、なんだったんだと、思います。私、真剣に思います。
でさ、さらに厄介なことに、この『Staffer Case』というゲーム、設定が『SCP』を下敷きにしているんだよね。ややこしすぎるわ。
『SCP』は、英語圏のインターネットユーザーが始めた、「SCP財団という知られざる組織がいるっていう設定で、みんなで面白いフィクションつくろうぜ」っていうフォーラムサイト(2008年に開設)を端に発する一連の創作群のことを、単に『SCP』って呼んだりするんだけど、その想像力が様々なコンテンツに波及してきている現状がある。レメディー・エンタテイメントが開発した『Control』というゲームが『SCP』をモチーフにしているとして有名、評判もいい(私はそんな楽しめなかったが)。
SCP財団は、例えばバイバインを使った栗まんじゅうが増殖を続けて地球を破壊する前に、それを安全に賢く管理するような組織で、彼らが人知れず頑張っているから地球は何ともないのだけれど、実はそういう異常で危険な存在が世界にはあるって考えるとワクワクだよねって感じで、その異常で危険な存在をネットのみんなが考えて、SCP財団が作成した文書形式というていで文章を書いて色んな人が投稿している。文書形式の一つに「オブジェクトクラス」というものがあり、その異常性の危険度を表す指標のことなのだけれど、投稿者はそれを設定する必要がある。SCPを知っている人は「え?Keter(ケテル)?!やっべー超危険じゃん!!!(ワクワク)」みたいな感じ。たぶん。
『Staffer Case』にも能力者の危険度にそういったレベル付けがされていたり、そもそも能力者を管理する組織があったり、というか主人公はその組織の特殊犯罪対策チームみたいなところに配属されるところから物語が始まったりして、『SCP』じゃん・・・って感じ。日本でも『SCP』的な想像力の影響は届いているのだが、なぜかこちらは土着ホラーに発展し、逆に『SCP』的なものがすごい勢いで後退していたりするのでおもろいが[3]、関係ないので置いておく。
『Staffer Case』の開発者たちは、『SCP』って便利な設定使えるじゃーんと、自然に使えているのに、日本はなんかそういうことにはならないんだね。だからダメってことじゃないけど。
あ、ちなみに早川書房が『SCP』の人気作『反ミーム部門は存在しない』を書籍化するって話だね。反ミーム的なやつも、パズルをこねこねしておかしくなっちゃう話だから、だから、なんなんだろう・・・。私もおかしくなってきちゃったよ・・・。面白いゲームって伝えたいだけなのに・・・。みんな「スクラントン現実錨」って知ってる???
つーか、なんで今更2023年のゲームやってんの?って話なんだけど、もうすぐ、7月に、これの続編が出るんだよね。『Staffer Retro』だって。それをプレイするための準備ってわけ。なんで新作をやるかってそら、ねえ、「ぜんぶに文句を言いたい」って生意気言っちゃったから、頑張ってるの。
個人的な話だけれど、そもそもテキストアドベンチャーゲーム自体、私はすごい苦手なジャンル。文章を読むのが遅いから、すごい時間かかってしんどい。どれくらい苦手かっていうと、『パラノマサイト 本所七不思議』をクリアするのに3年かかってる。あれプレイかったるすぎた。いいゲームだと思うけど、かったるポイントが多かった。最近やっとクリアしたんだけど、一番最初に取った実績が3年前でビビったね。

なので次は『パラノマサイト 伊勢人魚物語』をプレイしますね。うひょ〜!!!
あー、今回も長く書いちゃった。これ、ちがうんじゃないかな、マジで。



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