ここ数年、モキュメンタリーホラーだとかが流行り続けているじゃん。日本。正直もうこっちは飽きてるんだけどさ、今は『濁唾濔蓏 ダクダデイラ』っていう小説が話題ですって。KADOKAWAが運営する小説投稿プラットフォーム『カクヨム』で連載していたものが書籍化されて、それの広告が私のXのタイムラインにはしょっちゅう現れてうぜー。今年(2026年)の4月に発売された小説なのに、未だに色んな本屋では平積みされていてすげー。みんな読んでいるっぽい。読みました。Kindleで読みたかったけど、ページデザインが無駄に凝ってて書籍で買った。著者は餅屋䖸(モチヤ アリ)。
去年映画化もされた『近畿地方のある場所について』(これも『カクヨム』発だった)もそうだけど[1]、おもにネット上で何かしらの形で確認でき、今は何かしらの理由で削除されたテキストを、著者がまとめたという設定の、フィクション。『5ちゃんねる』『弁護士ドットコム』『Yahoo!知恵袋』『SUUMO』『X(Twitter)』『Reddit』などの様々なWebサービスに書き込まれたりしたテキストが登場し、はてはアダルト動画サイト『Xvideos』の動画についたコメントまでが出典元として登場する。そういった意匠は、凝っているといえばそうなのだが、正直もうどうだっていいよって、個人的には思う。なんだっていいって、まじで。そこに『魔法のiらんど』があってもなくても、どうでもいいじゃん。これらの設定は、もはやこの話が本当にあったかもしれないっていう不気味さを演出したいっていう意図の表明でしかないから、読者である私にとっては「了解っす」ってする手続きがあるだけで、正直めんどいなって感じる。テレ東の『TXQ FICTION』シリーズもそうなのだが、最近のモキュメンタリーホラーはフィクションであることを前提としつつ、そういった細かい設定を強調する傾向があり、私個人としてはそういったこだわり(?)にあまりいい印象をいだいていない。単にめんどい。
この小説はそうやって色んなところから引っ張ってきたテキストをつなぎ合わせた短編ホラーがたくさん収録されていて、そんでそれらのエピソードがどうやら関係あるらしいぞっていう、これまた最近のホラーにありがちなスタイル。つまり「考察」を楽しんでくださいってやつ。『おしえて!オカルト先生』でまとめられ、謎を整理されて考察されるまでがセットなやつ[2]。知ってるから、そんなの。
って感じで読んでいたのですが、この小説の最後に収録されている(この小説の中では比較的)なっげーエピソードが、単にアホほどグロくてよかった。ほとんど中編って長さで、文体だとかが(一応Discordの書き込みって設定だけど)一般的な小説と変わらなくなっていて笑うが、開き直って普通にホラー小説を書いていて、よかった。というか、ネット上のどこかの書き込みだったりが、そんな凝った人体破損描写などをするわけがなく、そもそも書き手が表現にいろいろな制限を勝手に設けているだけなのだけれど、それをどうにか工夫しろやと思わなくもないが、モキュメンタリーだとか関係なく極端に不快な描写をたくさん試みていて、よかった。嫌な気持ちになりたいんだからさ、こっちは。嫌な気持ちになれたよ。
んでね、読み終わって、「なんか最後急によかったな」とか思ったりしていたんだけど、この小説について少し調べたら、この最後のグロいエピソードは『カクヨム』運営から警告されて著者が非公開にした曰く付きのものらしい。うるせーなにそれ。んで、その曰く付きエピソードは書籍では無事に収録できたんでヨロってことらしいんだけど、まあわかるけどさ、『カクヨム』について詳しくないけどさ、あの程度の描写で警告くるとか普通にありえないと思うんだけど、てかプラットフォームとしてそれってやばいと思うんだけど、そんなプラットフォームをよくみんな好んで利用してますね表現の自由とか言っといたほうがいいんじゃねーの?とか思ったりはせず、十中八九これは著者による演出なのだろうが、頑張ってんなと思うしかない。
意外と分厚い小説だけれど、基本ショートショートだししっかり読み込むようなものじゃないからサクッと読めて、まあ割といい感じのエピソードも他にあったので、ホラー好きにはおすすめって感じ。姉が無いはずの翼の幻肢痛に悩まされて死んだとか、キモくてよかったよ。
そんでよ、黒塗りについて考えるわけ。最近のモキュメンタリーホラーってとりあえず黒塗りなの。『濁唾濔蓏 ダクダデイラ』でも「■■■■■、■■、■■■■■■■■■■■、■■■■■■」みたいなやつが書かれていてさ、黒で塗ってるなあって思ったのね。こういうの、機械音声が読むと「ピー」になるよね。ある文章が書かれて、著者やら誰か偉い人が読んで、この部分は様々な問題があるので黒塗りにしようって判断があって処理され、そのあと私たちに届いてるっていう文脈を感じさせるやつ。
黒塗り表現ってとりあえずそれだけで『SCP』っぽいのね。
『SCP』のWikiのスタッフが黒塗りの使われ方についての文章を書くくらいには、黒塗りはよく用いられる表現ではある。
んで、フロクロの『黒塗り世界宛て書簡』ってまんまな楽曲もあったりするじゃん。
https://www.youtube.com/watch?v=8BekVGwSX3c
黒塗りが持つ文化的な意味についてちょっと考えたりしてるんだけど、やっぱりモリカケ問題とかも思い出すわけ。で、マジの公文書のほうが怖くて笑う。

https://www.youtube.com/watch?v=k9gsvZ_eyns
こわすぎわろた。
こういったありえん黒塗りのイメージ、つまり現実の政治のイメージが、黒塗りカルチャーに影響を与えてるのかなとか、一瞬考えたけど、現実の黒塗りがありえなさすぎて、あまり関係ねーなって気持ち。普通に『SCP』とかが、じわっと流行ってるだけな気がする。
『SCP』なんかでは、その情報を見聞きしただけで人が死んだりするっていうふざけた話が多いからさ(認識災害だとかミーム汚染だとか呼ばれたりするやつ)、黒塗りは大切なんだよね。黒塗りによって守られるのが読み手っていう、逆転があるのよねえ。




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