今週の人文ウォッチというゲンロンが運営しているYouTube番組があり、いつだか忘れたけど視聴者からのおたよりコーナーで、Youtubeの「バーバパパ」について語ってほしいといったおたよりがあって、さらっと触れられただけだったので、私ががっつり語ってやる!!!
別にカルチャーやコンテンツを掘り下げたりする番組ではないので、ちゃんと語れやとか文句があるわけではない。人文ウォッチとかさ、好きな番組なので、補完的な意味で、なんか、語ってみる。文句があるなら自分で語るべき。文句はないって言ってたのに?
ってわけで、YouTubeで変なアニメーションと変な音楽の動画を投稿している「バーバパパ」のはなし。
当然だけどさ、絵本のバーバパパとは関係がないよ
有名な絵本の「バーバパパ」と、本当に何も関係がない。ふざけてて、良いよね。
バーバパパは、2010年代の後半から、変な動画を作ってYouTubeで発表している変な人。
こういうの。
シュール、不条理、ちょっとキモい。そういう印象を与えるユーモラスな3DCGアニメーションに、4つ打ちの太いキックがズンズン鳴るようなキャッチーな自作の電子音楽をくっつけた動画をたくさん投稿している作家。ミュージックビデオと呼ぶには、映像と音楽が密接に絡まりながら1つの世界観を提示していたりするので、この作家の作品は、なんというかまあ、「映像作品」と呼ぶしかない。けれど、ミュージシャンとしの側面は無視できない。
なので、「映像作家」であり「ミュージシャン」ってことになる。たぶん、バーバパパを知る多くの人が、そのように認識している。
映像と音楽を自身で手掛け、それがまるごと評価されている作家はそこそこ珍しいが、映像制作に用いられるツールが安価(Blenderとか無料で使えるし)に使用できる環境が整ってきたこともあり、音楽も映像もやるよって人たちは少なくない。ってか米津玄師もさ、絵を描いて映像作ってとかニコニコ動画で活動していた頃にやっていたよね。そのあと踊ったりもしてたよね。
キモくて怖い映像と音楽
バーバパパの作品群はユニークだけれど、もちろんルーツとおぼしきものはいろいろ考えられる。
不条理だったりキモかったりな映像と音楽には深い歴史がある。それこそ最近映画が上映したりで話題のマイケル・ジャクソンの有名な『Thriller』だって、ゾンビが歌って踊る不条理でキモくてちょっと怖い側面がある。こんなのは私がここで改めて書くことでもないけれどさ。
そんな中でも、例えばドラッグカルチャーと密接に関係してくるような音楽ジャンル(4つ打ちでズンズンしてるような音楽も含まれたりする)になってくると、あやし〜クスリを服用したときに見てたのし〜ってなる用の何かとして、親しまれてきた。そういう歴史についてもここで解説はしたりはしないが(怖いので)、adult swim[1]の『Off The Air』シリーズを見れば、そういう映像が世に溢れていることを実感できるはず。
ここで私は『Off The Air』だけですべてを説明しようとしていてやばいが、ドラッグカルチャーの話がしたいわけでもないので、こいつやべーと思っておいてほしい。
日本では文化的に、大麻やらMDMAやらあれやこれやのドラッグを身近に感じたりはしないが、日本の外ではそういう映像に関心があるぜって人たちがそれなりの数存在している。そして、バーバーパパの作品たちも、これら映像の横に並べてもあまり違和感がない、と私は思うのだがどうでしょうか。
とはいえ、ドラッグを服用して音楽や映像を楽しむとか、日本では誰がしてんの?っていう話はある。そりゃ、楽しんでいる人は楽しんでいるだろうが、ごく一部だろう。そういうジャンルの芸術が、日本の作家であるバーバパパと関係してるってのも、強引な主張だって思われるかもしれない。バーバーパパは薬やってんのか?とか、そういう話ではもちろんないよ。やってんのかもしれんが、私は知らん。
検索してはいけない言葉
もはや忘れ去られた言葉として「検索してはいけない言葉」というものがある。自然言語でやりとりできるAIが大流行中の現在では、すごい勢いで過去のものになりつつある「検索」。何をするにも検索だった頃に、検索に用いたら恐ろしい思いをするとされていた言葉たちがあった。2007年「2ちゃんねる」を中心に使用されるようになったこの言葉は、2008年に「ニコニコ大百科」に登録されたりと、徐々にネットユーザーに知られるようになる。言葉のとおりある言葉を検索すると、例えばすごいグロテスクな画像だったり、急にでかい音と怖いイラストが出てくるサイトだったり、過度にアブノーマルなポルノだったり、歴史上の虐殺の資料だったり、実際にあった陰惨な事件概要だったり、悪質なコンピューターウイルスだったり、あと色んな意味でネットのおもちゃになったやつらがヒットする。「検索してはいけない言葉」をまとめたWikiがあり、2009年頃から今でも運営体制を変えつつ存続している。そのことも怖いといえば怖いが、そのことは置いておく。
このWikiが定義するところによれば、「検索してはいけない言葉」とは「検索した事を後悔する要素を含んだ言葉」ということらしいが、ひたらく表現すれば、知らなきゃよかったと後悔することであり、検索によってあらゆる情報にアクセスできる環境を手に入れた時代で、好奇心が取り返しのつかない結果を招く恐怖や、その恐怖そのものへの好奇心が現れた言葉といえる。新しいテクノロジーが出てくると、それがホラーの題材になるってよく言われたりするけれど、これもそれと近いよね。
このWiki自体が、「検索してはいけない言葉」を中心としたミームを正確に捉えているものかは、かなり疑問の余地がある。が、このWikiを参考にして「検索してはいけない言葉を検索してみた!!!」系のコンテンツがYouTubeなどに山のようにあるので、基準のひとつとして考えることはできるだろう。
Wikiでまとめられているものの中には、前述したドラッグカルチャー的キモくて怖い映像が多くある。一応のところドラッグが厳しく(カスタム君とかによって)取り締まられている日本では、そういった表現は「インターネットの不気味なイメージ」としていろんなものと混ざりあっていき、日本のネットユーザーに親しまれていたよね、というのがこの文章の大まかな主張。そして、バーバーパパ(やそれと近い作家たち)は、そういったイメージをみて育ってきた作家だという整理をしてもよくね?みたいな話。
ということに説得力を持たせるために
人によってはもしかしたら懐かしく感じるような、「検索してはいけない言葉」Wikiで記事が作られている作品たちの話を始める。無限にネットサーフィンをしていたあの頃を思い出しちゃうかもね。
『Baaa』
検索してはいけない言葉の記事→https://w.atwiki.jp/mustnotsearch/pages/1229.html
cyriakによる、不思議な音楽とともに羊がぐねぐね変形するアニメーション作品。
2011年に投稿された動画で、2026年7月現在までで1.3億回再生、え、再生されすぎだろ。すご。
同じような図像が繰り返し現れたり増えたりするのは、たぶんなんかドラッグ的に嬉しかったりするんだと思うが、よく知らんので知らんなってことにしておく。見てもらえれば、何かもうバーバパパに近いノリを感じることができるのではないだろうか。音楽の方向性は違ったりするが、映像の展開が「え、なんでそうなるの」とツッコミを入れたくなる不条理さとユーモアがある。
cyriakはこの動画が人気となり、その後BonoboやFlying LotusのMVを手がけることになる。
BonoboやFlying Lotusは、なんつーか、カッコイイ電子音楽をやる人たちです。長くなるからさ、説明は省くよ。聴けばよくね↓
(2013)
(2014)
Flying Lotusが主宰しているレーベル「Brainfeeder」ってのがあってさ、ほら最近の若手の日本のミュージシャンのさ、長谷川白紙が、そこで楽曲を発表したりとかしてたよね。どうでもいいけど。
cyriakは何ならAdult Swimの仕事もしているよ。
もうこいつの説明だけでこの話を終われそうな気持ちが私にはあるが、もうちょっと紹介していく。
『Rubber Johnny』
Chris Cunninghamという映像作家が2005年に作った作品。Wikiへのリンク。
不気味な人っぽい生き物が、これまたぐねぐね変形する。音楽をAphex Twinが手掛けている。Chris CunninghamはAphex Twinの楽曲のMVをいくつも手掛けていることで有名な作家だが、まあなんか、どれもすげー不気味なものばかり。Aphex Twinってのもさ、なんつーか、カッコイイ電子音楽をやる人だよ。
誰かが勝手にYoutubeにアップロードしているものをここに貼る。
Chris Cunningham的に言えばPS2のプロモーション映像も有名で、これもなんか検索してはいけない事になっている
『イルカの夢でさようなら』
Wiki的なやつ
2004年頃からある(らしい)不気味なWebサイト。当時のものとはいろいろ異なる(と思う)が、今はこのURLで確認できる→https://iruka459.web.fc2.com
表示される女の子をクリックするとどんどんぐちゃぐちゃになっていき、その先のページには常に動く押しにくいリンクがいくつもあって、そのリンクを押すと変なマンガだったり、変な音楽だったり、あと単にびっくりせてくるやつだったりがある。
まあこういう個人のWebサイトは当時いくつもあったりしたのだけれど、その中でもまあまあ有名なもの。
んで、これを作った人はATOLSというボカロ楽曲などで知られるミュージシャンであることが後々判明したりする。
こういう音楽を作ってる人。
つまりなんか、電子音楽っぽいやつを作ってるやつが作ったってこと。
『sm666』
Wikiのやつ
ニコニコ動画に存在するという噂の呪いの動画の記録、っていう設定の動画(2007年)。ぴろぴとと名乗る作家によるもの。呪いの動画なので、わかりやすくホラーな内容となっている。どす黒い赤でおおわれた画面に気味の悪いよく分からないものが細かく動いている。
Youtube版もある
どうでもいいが、同じ作者による『My house walk-through』は、小島秀夫がサイレントヒルを作るぞ(作れなかったのだが)って予告するためだけに作ったゲーム『P.T.』から影響を受けたであろう内容で、こっちもいいよ。
これらはホラーなんだってよ
「検索してはいけない言葉」のWikiで扱われるあれこれは、さまざまなキーワードによって分類されている。「マルウェア・ブラクラ」「セクシャル」「グロ」「病気」「真実」「電波」などなど、管理者たちによっていくつか設定されている。タグ付けのようなもの。そしてここまで紹介した作品たちに共通して付けられているキーワードが「ホラー」だ。『sm666』は分かりやすくホラーって感じがするが、他の作品も同じように分類されている。Wikiとしては「ホラー:視覚的恐怖や不協和音が流れるもの」としてぼんやり説明されているが、まあ、一般的に使われる「ホラー」という言葉とほとんど同じだということにする。つまり、少なくともこのWikiの管理者たちにとっては、そしてこのWikiを利用してコンテンツを作る人たちにとっては、さらにそのコンテンツたちを楽しんでいるユーザーにとっては、ここで紹介してきた作品は恐怖を煽るホラー作品として、超ざっくり、同じグループでくくられている。それは単にわからないから怖いとか、そういうものなのかもしれないが、私個人の考えで言えば、もっと深い意味があるんじゃね、って話をもう少しする。
実はこのWikiにはバーバパパの2020年の作品『ウ”ィ”エ”』のページがある。
『ウ”ィ”エ”』
YouTuberのHIKAKINがカバーしたことでも知られる、有名な非常に人気のある動画だが、登場するキャラクターの顔が不気味に変形するのが印象的。その見た目が、中山昌亮の『不安の種プラス』というホラーマンガに登場する「オチョナンさん」と呼ばれる怪異によく似ている。「オチョナンさん」自体がインターネットミームとしてそこそこ有名であり、やはりWikiに記事が作られている。うーん、なんでもあるなこのWiki。大丈夫なのか。
バーバーパパはテクノだったりEDMだったりするような楽曲と、ネットミームになっているホラーマンガの「オチョナンさん」を結びつけた。
ここでとあるトークイベントのバーバパパの発言を紹介する。
Q.影響を受けたアーティストさんはいらっしゃいますか?
「音楽は、いろいろですね。ロックからメタルからクラシックからEDMまで。誰っていえば……誰かな?(笑)」
「音楽は出てこないですけど映像はこの人ってのがいて、YouTubeに動画を上げてる、イギリスの方で(※)cyriakさん。gif動画で増殖するみたいな映像なんですけど、この人の影響がすごい大きいですね」
引用:https://note.com/45me_yab/n/nbda73c01d6bd
言うまでもないが、cyriakは最初に紹介した『Baaa』の作者だ。バーバパパという作家にとっても、やはりcyriakの表現はホラーなのかもしれない。「検索してはいけない言葉」を介して、ドラッグカルチャー的な表現はホラー的表現へと翻訳され、その逆として、インターネットのホラーアイコンであった「オチョナンさん」がドラッグカルチャー的表現と近しいものと解釈されたのではないか。そしてこの感覚はバーバパパだけのものでなく、「検索してはいけない言葉」を軸として日本のネット圏で共有されているのではないか。
『ウ”ィ”エ”』という動画が5000万回も再生されるほど親しまれている背景には、「検索してないけない言葉」が大きく関係していると、私は考えている。ドラッグが流行っていない国で、なぜかホラーがその翻訳先を担っているように私には思える。
っていう回りくどい話をしなくても
そんな話をくどくどしなくてもさ、バーバパパと立ち位置が近く、一緒に仕事をしてもいたりする映像作家「Franz K Endo」の話をすれば、アホほどシンプルになる。
MADドラえもんで知られるFranz K Endoは、サイケデリック(色がビガビガしたりするやつ)でナンセンスな映像を得意とする作家。そして最近のテレビ東京のホラー番組とかホラー的な展覧会のアートワークだったりティザー映像を手掛けている。
この恐怖心展の映像なんかは、映画『スキャナーダークリー』を参照しているように思われる。フィリップ・K・ディックの小説を元にしたこの映画は、みんなでドラッグしてたらみんな死んじゃってガチ鬱みたいな(え、そんな話だっけ?)SFアニメーション映画。
ホラーとドラッグカルチャー的表現が結びつき、最先端の表現っぽい雰囲気となんかオシャレ感すら漂わせている。BRUTUSでこんな対談とかしちゃってさ、ほんまかいな。でもさ、私が今まで説明してきたけど、これらも要は「検索してはいけない言葉」なんだってことを、私は言いたいよ。マジで。むしろこっちのほうが、ドラッグカルチャー的な表現に近すぎて、嘘っぽい気が、個人的にはするけどね。
でもさ
でもさ、今までしてきた話って、「大林宣彦の『HOUSE』」ってひとこと言えばぶっ壊れそうだよね。昔からそうだっただろばーかって。でもさ、あの人ってドラッグとかやってたんじゃない?それなら壊れないかもしれないよね。えへへ。
もっと早くこの文章を書きたかったけれど、すごい時間かかっちゃった。でも、こういう「ダサい」話が書けてよかった。バーバパパがダサいとか言ってるわけではないよ。でもさ、なんかあるじゃん、しない話って。
これ書き忘れてた
超どうでもいいけど、バーバパパを騙る偽物業界人事件ってのがあって、その偽物ってのが、タルレミ・エラという個人Vtuberがかつて所属していた事務所の立ち上げ人なんだって。詳細は↓これ
https://x.com/Tallemi_Ella/status/2043320374935622023
タルレミ・エラ的は信用していた人が意味わからん嘘つく狂人で怖いわってことらしいんだけど、人文ウォッチの配信では「Vtuberが騙された」ってことになってて、まあ騙されてはいるんだけど、直接被害にあっているわけではない。
一番どうでもいいんだけど、私はタルレミ・エラの『オーバーウォッチ』配信が好きでよく見ている。タルレミ・エラさん、『オーバーウォッチ』の布教を頑張って、タンク人口を増やしてくれ。頼む。
おわり。




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